連載

vol.00 型がなければ、それは形無し。

日本舞踊の動く事典
連載#00

初めまして。日本舞踊家の宇津木安来(うつぎ あんら)です。「日本舞踊の動く事典」と題し、連載を始めさせていただくことになりました。

日本舞踊では、舞踊を構成する動きの基本単位である「振り」を型通り正確にできるようになることが大事であるとされています。「振り」を「型通り正確に」と聞くと、自由であるはずの身体が窮屈になり、まるで型枠に押し込められるような印象を持つ方もいるかもしれません。けれど「型があるから型破り。型がなければ、それは形無し。」という十八代目中村勘三郎さんの言葉にあるように、日本の文化は「型」から入って本質を体現できるようになることで、初めて本当の意味で自由になれる、という考え方があります。

そこでこの連載では、日本舞踊を構成する動きの基本単位である ①「振り」の動作、②「振り」の意味、③「振り」を行う上での身体と意識の使い方、の三つに焦点を当て動画を使って解説。それらが集積した結果、この連載が、日本舞踊を楽しむ際に参照できる「動く事典」のような役割を果たすようになればいいな、と思っています。

皆さんが日本舞踊をご覧になる時に、身体使いに対する興味をもって楽しむことや、振りが表現する情景が自然と浮かんでくるような楽しみへと繋がる、小さな手がかり足がかりとなれば幸いです。楽しんで見守っていただけますよう。よろしくお願いいたします。

 

宇津木 安来 (うつぎ・あんら)
平成13年、宗家藤間流入門。平成18年、名執資格修得。平成21年、師範資格修得。
平成22年、運動科学者 高岡英夫に師事。
平成24年、東京藝術大学音楽学部邦楽科日本舞踊専攻卒業。
平成26年、東京藝術大学大学院音楽研究科邦楽専攻日本舞踊研究領域 修士課程修了。修士号取得。研究テーマは、「日本舞踊における記号学的構造ーソシュール記号学を用いてー」。平成31年、東京藝術大学大学院音楽研究科邦楽専攻日本舞踊研究領域 博士課程修了。博士号取得。研究テーマは、「日本舞踊における「体幹部」の技法分析および基礎練習法の提案―モーションキャプチャシステムを用いて―」。在学中、日本学術振興会特別研究員(DC2)採用。
現在、津田塾大学講師、東京藝術大学COI拠点研究員、運動科学総合研究所研究員。

https://www.annla-u.com/

 

[連載一覧]宇津木安来・日本舞踊の動く辞典
・00 はじめに
01 お酒を注ぐ【はじめに】
02 お酒を注ぐ【秘訣①:重みを感じる】
03 お酒を注ぐ【秘訣②:重心を感じる】
04 お酒を注ぐ【秘訣③:胸を落とす】