お座敷落語の会 第11回 瀧川鯉昇師匠の噺を一杯飲みながら

落語だって贅沢に楽しみたい。だから和塾は「お座敷落語」。毎回あっという間に満席の大人気企画であります。

ホールや演芸場では体感できない落語本来の繊細な迫力を、まさに目と鼻の先、マイクもスピーカーもなしでご堪能いただきます。料理屋の座敷に噺家を呼んで一席所望する。かつては粋な旦那衆のお座敷でのお遊びのひとつだったのですが、 昨今ほとんど例がない。ここはぜひ、みなさまに「旦那衆」を担っていただき、明治・大正の粋人たちのお遊びを復興させようではありませんか。

 

第11回目の今回は、その独特なフラが魅力の瀧川鯉昇師匠をお迎えしました。

脱力のマクラから始まり、飄々とした語り口に絶妙の間、そして無敵のオトボケに大笑い。芸歴46年の確かな話芸に裏打ちされた唯一無二で破天荒な高座は、もう病みつきになります。

そんな鯉昇師匠ですから、今回は旨酒を一杯いただきながら噺を聴きましょうという趣向で。演目は「粗忽の釘」と「二番煎じ」の豪華2本立てでお楽しみいただきました。

まずは、鯉昇師匠と山本益博さんの対談からスタート。

◆瀧川鯉昇師匠のこと

浜松生まれの鯉昇師匠は、上京して八代目春風亭小柳枝の弟子になるのだが、ほどなくして、師匠が落語家を廃業してしまう。大酒飲みが原因で、しくじりを重ねた結果だった。にもかかわらず「見栄を張らない、虚飾のない芸・生き様」に惚れていた前座時代の鯉昇さんは、師匠の酒にとことん付き合い、破滅型の師匠の人生にどこまでもついていった。そのあたりの話は凄絶を極めるのだが、なぜか悲哀を通り越して清貧さに打たれるのだ。こういう修業時代を送った落語家の高座が面白くないわけがない。とりわけ、『長屋の花見』『粗忽の釘』といった長屋の滑稽噺が素晴らしい。また、師匠の小柳枝と同じく酒が大好きな鯉昇師匠だから、酒が出てくる『二番煎じ』や『芝浜』も得意にしている。

(山本益博のずばり、この落語!第十六回より抜粋)

 

慌てものの亭主のドタバタ劇「粗忽の釘」始まりました。

 

落語の後は、今回の会場である「茶寮一松」の旨飯を。茶寮一松は、江戸の祭りや習わしが今なお受け継がれる浅草の地に三代続く老舗料亭。日本の伝統的建築様式を今に残す数寄屋造りの建物で、鯉の泳ぐ池と庭を眺めながら、旬の食材溢れる会席をお楽しみいただきました。