第三十五回「ろ組」お稽古「平清盛ー平家物語」辻村寿三郎先生

長きにわたって伝えられてきたその人物像が、近年見直されている平清盛。
定説とされている暴君としての姿とは異なる人となりも見出され、その実像が探られています。

本日の講師である人形師の辻村寿三郎先生も独自の解釈を人形を通じて表現されています。

史実として伝えられていない話や史実とは異なる解釈で清盛にまつわるお話をしていただきました。

明確にされていない清盛の出生は謎が多く諸説あります。「平家物語」では清盛の生母とされる祇園女御ですが、ここでは権勢を確実なものにする目的で白河天皇の子である清盛を猶子にするため、清盛の実の母である妹を殺害する女性として語られ、権力を得るために恐ろしい女性へと変貌していく様が見られます。

また、後世にまで恐れられたほどの強い怨念をもつといわれる崇徳天皇は、藤原信西によって流された風説が始まりだとされる保元の乱で清盛と敵対しますが、もともとは西行を交えて清盛、崇徳天皇は親交があったのだと考えられているようです。
恨みを抱きながら没した崇徳天皇は怨霊となり、その強い怨念で平家滅亡を招いたといわれます。崇徳天皇が没したのが元号では「平治」であるため、元号に「平」「治」の文字が入ると世が荒れるとされ、「平成」の今にもその影響があるのではないかと先生は考えられているようです。

およそ1000年前の歴史に現代の新しい解釈を交えて進むお話。
その話に聞き入る塾生のため、休憩と銘打って披露していただいた人形舞では、顔の向きにあわせて目が動く“おいかけ”という貴重な目をもった人形が優雅な舞を舞います。
人形舞はお稽古中に三度も披露され、その舞の撮影に塾生は夢中になります。

独自の世界観をもって展開されるお話と美しい人形舞に魅せられたお稽古でした。