深海さとみー箏・三絃リサイタル  観劇・鑑賞会

深海さとみ先生のリサイタルに行ってきました。

Text by kuroinu
会場は紀尾井ホール。四谷の上智の近くです。囃子演奏会があった浜離宮ホールもそうでしたが、東京にはこうした立派なホールが結構あるんですね。ドームとか武道館とか、あるいはブルーノートとかビルボード・ライブ系の箱しか縁のなかった我々にとっては、会場がまず新鮮です。上品で上質。和服のご婦人が似合います。けれど、もし、もっと多くの新しいターゲットを集客したいのなら、こうした雰囲気はネガティブです。ワクワク感に欠けてます。ま、そんな議論は「日本文化市場論」に任せますか・・。

ロビーには和塾からのお花です。

ほぼ満席の会場の照明が閑かに落とされて、ぼんやりと浮かび上がった舞台に深海さとみ先生が淑やかに進み出ます。リサイタルはとても厳かに始まりました。

開演前の紀尾井ホール

今日のプログラムは全部で五つ。1)深海先生作曲の「みだれによる」2)宮城道雄作曲「中空砧」3)肥後一郎作曲の合奏協奏曲「六曲一双」。15分の休憩をはさんで、4)石川勾当作曲「八重衣」、最後は、5)山登万和作曲の「須磨の嵐」。
はじめのふたつは深海先生の箏独奏。(琴ではなくて箏ですよ)三曲めは突然奏者の数が増える合奏曲。総勢13名による箏の合奏です。相変わらずまるで素人な塾生は、この合奏に少し驚きます。低音部を担当する17絃の箏なども入っていて迫力あります。この曲は比較的新しいもので、曲調も少し西洋音楽っぽいところがあります。調べてみると、作曲者の肥後一郎は、1940年生まれのようです。この少し西洋風の曲調が、箏の調べと心地よく整合するのかどうか。評価は分かれるように思いました。

休憩時間、尺八の石倉光山先生にご挨拶。葛西聖司先生もいらっしゃっていたようです。

「須磨の嵐」演奏中

四曲め。深海先生の三絃つまり三味線の演奏です。曲は幕末の三絃の名手・石川勾当の代表作とのこと。赤い毛氈に正座して三絃を弾く姿が艶っぽい。感想がくだらないですが・・。
最後の曲は、箏と三絃の合奏。賛助出演ということで、萩岡松韻さんが登場。山田流箏曲萩岡派の宗家です。深海先生は生田流ですから、この競演は石倉光山先生によると「異種格闘技戦」とのことでした。生田流と山田流。箏に対する座り方が確かに違いますね。

終演後のロビーで深海先生

ところで、今回のリサイタル、コンテンツの素晴らしさとチラシ・ポスターのギャップが激しかった。公演に先立ち、多くの人びとにリサイタルを知らせるほとんど唯一のツールがとして、これは完全に失格です。余計なお世話ですが、あまりに気になったので一筆。

※以下にリサイタルの様子を少しだけ動画でご紹介します。公演を動画収録するのは、たぶん許されていないことだと思います。が、箏三絃の公演がどんなものか、塾生は恐らく誰ひとり知らないでしょうから、その雰囲気だけでも感じて欲しいので敢えて紹介。諸権利を侵害する考えはまったくないことは、言うまでもありません。そういう動画ですので、深海先生に怒られたら、即刻削除いたします。ご了解ください。

 

参考・歌詞】そもそも熊谷直実は、征夷大将軍源の、頼朝公の臣下にて、関東一の旗頭、智勇兼備の大将と、世にも知られし勇士なり。されば元暦元年の、源平須磨の戦ひに、功名ありし物語、聞くもなかなか哀れなり。その時平家の武者一騎、沖なる舟に遅れじと、駒を波間に駆け入れて、一町ばかり進みしを、扇をあげて呼び戻し、互いに鎬を削りしが、・・・