恒例お座敷落語は権太楼師匠の「心眼」

テレビやホールではまず聴けない上演自粛落語をお座敷で堪能しました。

時局騒然とした昭和十六年、警視庁保安部は落語の内容に卑俗で低級なものが多いとの非難の声を受け調査を実施、同年九月二十日、遊郭や遊女を扱う廓噺や間男の噺など五十三演目について上演禁止とする通達を発しました。戦後になってこの禁演は解除されるのですが、落語には、その後もさまざまな理由で上演できない演目が存在します。テレビなどのメディアで放送できない「艶笑落語」や差別的文言が入っているための「上演自粛落語」などがそれ。

 

今回、権太楼師匠にお願いする「心眼」もそうした自粛芸のひとつ。師匠によると「明治時代の噺だから今じゃ使ってはいけない言葉がたくさん出てくるわけ。でも、そういう言葉を梅喜さん(主人公の按摩)は言われ続けたわけだ。」とのこと。

この演目を上演しようとすると関係者から「師匠『心眼』おやりになるならあの言葉はカットしてくださいって。でもそれじゃできないんですよ。あの噺をやるには、汚い言葉が必要なんです。じゃないと噺が進まない、後にいけない。」


ご案内は落語評論家の山本益博さん(左)

というわけで今ではこの名作「心眼」は聴くことのできない落語として世間の渦の中に埋もれてしまっているのです。そこで和塾は考えました。限られたお仲間だけで楽しむお座敷落語の会でならこの自粛演目だって上演できるのでは?と。

というわけで、今回のお座敷落語の会は特別。上演不能の自粛演目を名人権太楼の名調子でご堪能いただきました。この機会を逃したら二度目はまずない希有の落語会。会場の料理屋は横濱台町の割烹料亭の「田中家」。創業は文久三年。あの坂本龍馬の妻おりょうが、龍馬亡きあと住み込みの仲居として勤めていたという老舗です。正に特別仕立ての自粛禁演落語の会。静かな感動に包まれて幕となりました。