ー春画~豆男の色道修行ー白倉敬彦先生 第二回混合クラス

日時:2009年8月19日(水) P.M.7:00開塾
場所:六本木 はん居

8月の「はん居和塾」は春画のお稽古。
白倉敬彦先生をお迎えして、寺子屋風のはん居での手習いでした。

今回は座学。これも悪くないです。

春画というのは「大人の慰み物」。西洋のポルノグラフィが「独身者の機械」としてもっぱら性欲を刺激したのに比べるとかなり異なる位置づけです。春画には、情報量が多すぎて性欲を刺激するための焦点が定まらないという特徴がある。例えば、ほとんどの春画にはたくさんの文字が書かれている。画題や絵の背景を説明した「詞書(ことばがき)」や、画中人物のセリフを書いた「書き入れ」など。ビジュアル面でもその情報量はとても多い。部屋の様子や調度品など詳細に描き込まれていて、人物の衣装や持ち物、襖絵や屏風絵、部屋に置かれた三味線や料理や書籍やら、背景の庭の樹木や灯籠、のぞき見する隣のオヤジや通行人、部屋を横切る猫や犬・・・。見所・読み所が豊富すぎて、鑑賞するにはとても面白いのですが、性欲が刺激されるのかというと、確かに少々気が散ります。

今回のお稽古で白倉先生が細かくご説明いただいた、鈴木春信の「風流艶色真似ゑもん」も、情報量は膨大です。写真をご覧ください。

この「風流艶色真似ゑもん」は、武士の浮世之介が仙人の秘薬で豆のような小さな男に変身し、真似ゑもんと名乗って諸国を巡る物語。旅の目的は色道の奥義を求めることですから、全国各地で多種多様な情事をば、小さくなった身体を良いことに、覗き見てはあれこれ感想などをつぶやきます。

例えば、次の絵は田植えをする農夫の一家のお話し。恐ろしげな面をつけた男が現れ、自分は「よがらすの神」だと名乗る。農夫に向かって、娘を差し出せば豊作を約束する、と。で、農夫の方は、この偽神に手を合わせて、娘も嫁も差し出すから神様によろしくとりなしてくれと頼んでいる。左側の農夫の上に書き入れがあり「ありがたのよがらす妙人様、娘もばばめもささげます。お稲荷さまへもよろしくおとりなし頼みます」と書いてありますね。[くずし字の読み方→第六十三回お稽古参照] 豆男・真似ゑもんは、この様子を一服しながら眺めて「これは一興」なんて言っている。

豆男・真似ゑもんが見物する性生活は本当に多種多様です。師匠と教え子、身重の女房に隠れて親戚の娘と浮気する亭主、男色、隣人に刺激される老夫婦、馬子と客・・・・。おおらかで開放的な性の風俗。しかも、そこには常に「笑い」がある。現代の西洋キリスト教的な禁欲主義の性風俗とはかなり様相が異なるようですね。

これはよく見ると男色ですな

これは亭主の浮気 バレて騒ぎになる

隣室の刺激で燃える老夫婦

馬子と客「もう駄賃もなんにもいりませぬ」などと

寺子屋の師匠が教え子を手込めにしている

春画に関するさらに詳しいお話しは、→第五十七回お稽古をご参照ください。

春画の楽しみ方完全ガイド

白倉 敬彦 / 池田書店

肉筆春画 (別冊太陽)

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