ーお能の入口ー馬野正基先生 第七回くのや和塾

日時:2010年2月24日(水) P.M.7:00開塾
場所:銀座 くのや 座敷


Text by yayo
「お能」のイメージとは、どのようなものですか?

難しい、とか、敷居が高そうとか・・

私も、学生の時に、学校の鑑賞教室で、国立劇場に行った記憶があるだけで、やはり、難しいというイメージを持ってしまっておりましたが、
今回のお稽古で、少し近づくことができました。

お話しをいただいたのは、観世流能楽師・馬野正基(うまのまさき)先生です。

馬野正基先生の謡と舞

 

それでは、今回のお稽古の内容を書かせていただきますね。

まずはお能の舞台のこと。

能舞台

能や狂言は、能舞台で演じられるのが本来で、その能舞台を持つ能専用の劇場が能楽堂です。
能舞台の正面奥には、大きな老松が描かれた鏡板があります。常緑樹である松は、葉が対になっていることから、夫婦和合を象徴し、めでたい木として崇められています。
そして、神が天から降りてくる、憑代だともいわれています。

舞台の四隅には太い柱がありますね。この柱は、ただ、舞台を支える為だけでなく、面をつけると足元が見えないので、重要な目印にもなります。舞台に向かって左手前の柱は「目付柱」と呼ばれています。

能の歴史

6世紀の中頃、雅楽が大陸から伝わり、
田楽と言われる、天下泰平、五穀豊穣の為に神様に祈りをささげるために、
舞を舞っていました。
また、猿楽といわれる、物真似(鹿、馬などの動物の真似)や、曲芸、奇術、などの芸が、
次第に、音楽や楽器、鳴り物などを加え、歌を詠み、節を付けるようになった、謡(うたい)の芸能が出てきます。
これが、申楽(さるがく)といわれる、能の原型となりました。

そして、芸能一座があちこちに出来てきます。

京都、奈良などの都を中心に、芸能集団がたくさん出来、芝居小屋ができていました。
そして、ある時、四代将軍足利義満公が、結崎(ゆうさき)座という、申楽の劇団を見て、観阿弥が認められました。その時の観阿弥の息子(世阿弥)が義満公の目に止まり、わずか12歳でしたが、将軍の寵愛を受けることとなり、その絶大な後援を得て能を一層優美な舞台芸術に高めました。

世阿弥は、室町時代に、足利家の支援を受け、500曲以上の作ったと言われています(現存は約200曲)

初心忘るべからず

世阿弥は、たくさんの書を残しました。風姿花伝(花伝書)もその一つ。
観世太夫に残す技術書としても、後世に残されていますが、
その中の、誰でも知っている、名言「初心忘るべからず」ですが、
これは、人間関係などに使う言葉ではなく、
年齢や、芸の進歩によって、最初の基礎技術を忘れてしまうことを戒める為の言葉で、能を初めて稽古をした時の気持ちをくれぐれも忘れるべからず、ということが句の真意です。

戦国時代以降

戦国武将も、皆、能を好んでました。
武田信玄、前田利家、織田信長、また、豊臣秀吉は、自らも舞うほどの能楽好きだったそうです。
そして、江戸時代に入り、徳川家もそれを継承しており、
現在の能楽のベースは、江戸時代に形が出来たとされています。

江戸城には、城内に3箇所も能楽堂があったとされ、参勤交代の武士たちが、城中で、自らの能舞を競い合うほどだったのです。
また、美術的にも、江戸時代に頂点を極めたのでした。

能の種類

能は、登場人物で分類すると5つの演目にわけられます。
神(しん)・男(なん)・女(にょ)・狂(きょう)・鬼(き)
そして、この5種類を順番どおりに演じることを、五番立て(ごばんだて)
といいます。
昔は、日の出から始まり、日の入りまで能を演じていましたが、長時間になるため、現在では、正式な形では、年に一度ぐらいしかありません。

では実際に少し、お稽古をしてみましょう。
今回は、舞扇と足袋を用意して参加いたしました。

ということで、全員初めての経験でしたので、最初の姿勢から。
頭を揺らさずに、摺り足をするのが、こんなにも大変なんですね。
腕と肩、そして、腰に集中させて、頭の上の扇が落ちないように歩きます。

立っているだけで、かなりの負荷がかかります。
きっと次回お能を観劇にいった際には、見方が変わるはず。

今回のお稽古では、馬野先生熱意のこもった講義が大変印象的でした。

お能は文語体、狂言は口語体と言われていますが、お能の方が、狂言より難解で、
見ているだけで、だんだんと追いつかなくなってきてしまう方が多いと思います。
ですので、もし、機会があれば、あらすじや設定などを、少し事前に見てくれば、
見方もだいぶ変わるそうです。

先生がおっしゃる通り、見る側が敷居を作っていたのでしょうか。
日本人が、日本人の為に作ってきた芸能。
先入観をはずして、予習をしっかりしてから、お能を見に行ってみようと
思いました。
先生、ありがとうございました。