『タノシイ書道〜江戸文字講座』講師:江戸文字橘流 橘右之吉 師匠

日時:2013年3月23日(土)14:00開塾
会場:数寄屋金田中
講師:江戸文字橘流  橘右之吉 師匠

今日は橘右之吉先生に「江戸文字」について教えて頂きました。
江戸文字というのは、江戸時代に盛んだった太い筆で描かれていた文字で、歌舞伎の看板、相撲の番付け、消し札、洒落本などに、江戸時代の身近な日常生活において多く使われていました。中でもいくつかの書体がありますが、最も古いのは勘亭流の芝居文字です。

元々岡崎屋勘六が1770年代に歌舞伎の看板や番付けのために考案し、彼の号「勘亭」に由来しています。例えば、当時とあまり変わらない今の歌舞伎の看板や番付けを見ても、文字が太く、力強く、ぎゅっと詰まっているように描かれている特徴に気づきます。一見すると、文字が読みにくいと思うこともあるかもしれませんが、実は、お客さんを引き寄せ、歌舞伎座が満席になるよう願って、つまり商売がうまくいくように満席状態に見立て描く文字なのです。
同時に、歌舞伎俳優の力強さも文字を通じて伝わってくる「絵」と「文字」の密接な関係を感じさせられます。
後ほど、同じような描き方がお相撲界にも広がって行きました。また、書体が少し異なる相撲文字以外にも、寄文字、籠文字、髭文字と呼ばれる文字が落語、千社札、ビラ、番付けなどに使われるようになりました。

実際に、和塾生は先生の指導を受けながら、文字を江戸文字用の特別な、筆先が太くて短い筆で描いてみました。
書道の筆の持ち方とは少し異なったことが興味深かったです。筆を寝かせながら、太い線を描く。そして、一番驚いたのは、線を太くするために、同じ線の上に何回も描き直すこともできますし、描き順も普通の描き順と異なり、線を下から上に逆方向に描いても大丈夫なのです。

江戸文字は、文字を「書く」より、文字を絵のように「描く」ものだと実感できました。
[記:Fabienne Helfenberger]