「講談」について〜女流講釈師 一龍斎 貞友師匠をお招きして 

8月二回目の和塾本科は女流講釈師・一龍斎 貞友師匠に「講談」についてのお稽古。高輪 道往寺の本堂に高座を設けて講演と講談披露でたっぷり2時間、一体何種類の声を聞いたでしょうか。
講釈師として以外にも、声優としての一面も持つ貞友師匠。「魔法使いサリー」のよし子ちゃん役や「ちびまるこちゃん」のお母さん役といえば幅広い世代の方が声だけはわかるのではないでしょうか。その声優業の裏話や、師匠である人間国宝 一龍斎貞水師匠のお話、地方講談でのエピソードに加えて、人情ばなし「徂徠豆腐」と怪談ばなし「鈴の音」を披露いただきました。

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和塾本科・一龍斎 貞友師匠による「講談」
平成27年8月26日(水)道往寺
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「講談」は講釈師による話芸で、軍記、武勇伝などを、張り扇(はりせん)で釈台(しゃくだい)を打って語るのが特徴です。
同じ話芸でも「落語」と「講談」ではいくつか違いがございます。
① 「落語」は会話によって成り立つ芸↔「講談」は話を読む芸
②「落語」は手ぬぐいと扇子↔︎「講談」は張り扇と釈台(机)
③「落語」は江戸時代↔︎「講談」は奈良、平安時代に原型が見られる。

講釈師は「冬は仇討ち、夏はお化けで飯を食う」と言われ、今も昔も仇討ち=忠臣蔵、お化け=怪談ばなしが大人気。忠臣蔵関連の話に至っては、殿中の前日や四十七士1人1人の話など無数にあるそうです。
怪談ばなしと言えば和塾の「お座敷落語」でも披露いただきましたが、一龍斎貞水師匠の代名詞ですね。
講談も落語同様に見習い、前座、二枚目、真打と階級が分かれており、もちろん貞友さんは真打。前座から真打まではどんなに早くても8〜9年、普通は12〜15年かかるとのこと。真打の語源は寄席が当時、灯が全てロウソクだったため、最後に出演する芸人がロウソクの芯を打った(=火を消した)事からそう呼ばれるようになったという説が有力だそうです。

ちなみに講談中、会話が繰り広げられ場面では、その身分によって講釈師が左右に上半身を傾けて話します。講釈師が客席正面から見て右側に少し傾いたらその会話において身分が上の人のセリフを、客席正面から左側に傾いたら身分が下の人のセリフをそれぞれ話しているということになります。

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そして基本情報を学んだ後はいよいよ、講談の披露です。
まずは貞友師匠が得意とする読み物「徂徠豆腐」。
〜あらすじ〜
荻生徂徠がまだ無名の貧しい学者であったある日、空腹に耐えかねて近くを通りかかった豆腐屋七兵衛から豆腐を二丁買うが、細かいお金がないからと「ツケ」にして明日払う事にしてもらう。翌日、またその翌日も同じように二丁ずつをツケで食べた。四日目、今日こそはと豆腐屋七兵衛がお金を払うように言うと、徂徠はお金は無いが学者の勉強をして、世の中を良くしたいと言う。
それなら出世払いで良いからと、豆腐屋七兵衛は許してくれたばかりか、貧しい中で徂徠に支援してくれたのでした。ある時、豆腐屋七兵衛は風邪をこじらして寝込んで商いに出られなくなった。
回復して長屋を訪ねたが、もぬけの殻で、行き先も分からず、その後何回か足を運んだが結局縁がなくなって頭から若い学者の事が消えていったのでした。
時は過ぎ元禄十五年十二月十四日。赤穂浪士の吉良邸への討ち入り。その翌日の夜中、豆腐屋の隣りから火が出て、あっという間に辺り一帯が全焼してしまいました。
明けて十六日の朝。まだ焦げ臭いものが立ち込めた無残な増上寺門前。着のみ着のままで焼け出され困り果てた豆腐屋七兵衛夫婦に、知り合いの大工が、ある人から頼まれて十両の金を持参したので受け取って欲しいと渡してきた。受け取った豆腐屋七兵衛ですが、誰からかも分からない金に手を付けられないと、神棚に上げて困った時に使おうと決めます。
さらに数日後、豆腐屋夫婦は芝増上寺門前の焼け跡へ。
すると、焼けたはずの店が建ってる。棟梁に聞くと七兵衛さんの店だという。不思議に思っている夫婦の前に現れたのが、立派に出世した荻生徂徠先生。貧しい時に助けてくれたお礼にと、お金と新しい店を豆腐屋に贈り夫婦を救ってくれたのでした。
『情けは人のためならず』を教訓とする、心温まる人情ばなしでございました。

続いてはお待ちかねの怪談ばなし「鈴の音」。
文学者ラフカディオ・ハーン(日本名:小泉八雲)が書いた「日本雑録」に
収録されている短編「破られた約束」をアレンジした読み物です。
〜あらすじ〜
死の床で、妻は侍である夫に「後妻は娶らない」という約束をします。その約束に安心したかのように「庭の一隅に私の墓を建て、鈴を一緒にうめてください」という遺言を残して妻は亡くなります。
しかし、家督のこともあり、侍は再婚することになりました。
しかし結婚して七日ほど経ち、夫が夜勤番として出仕した夜、前妻の亡霊が新妻の夢枕に立ったのです。鈴の音とともに。亡霊は「この家を出て行きなさい。この家の女主人は私です」と言うのです。
脅えた新妻は、夫に離縁を申し入れますが、夫としても理由なく離縁状を書くわけには参りません。前妻の亡霊は次の日も現れました。新妻からすべてを打ち明けられた夫は部下の武士を不寝番として付けました。しかし、どうしたことでしょうか、番ををしている屈強な武士にも鈴の音が聞こえたのですが、体が一切動きません。そして、翌朝戻って来た夫が目にしたのは、首のない新妻の死体でした。しかも斬ったのではなく、もぎ取られていたのです。そして、血痕をたどると、前妻の墓の前に行きつきます。そこには、前妻の亡霊が鈴と新妻の首を両手に持ち立っていました。
夫は悲痛の思いのまま前妻の亡霊を斬り捨てるのでした…。

〜余談〜
小泉八雲はこの話を語って聞かせた友人に聞きます。「約束を破ったのは、夫である侍だ。どうして亡霊は侍に復讐しなかったんだ?」、それに対して友人は言います。「男はそう考えます。しかし、それは女の感じ方ではありません」

これらの講談を貞友師匠ならでは、数え切れないほどの声と表情で披露いただきました。たくさん笑い、たくさん怖がりとても貴重なお時間でござました。

一龍斎貞水師匠、ありがとうございました。

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