uraku和塾 第一回『世阿弥』ゲスト講師:林望

会員制俱楽部「uraku青山」20周年を記念し、和塾共催にて、
開催いたしました『』。

足許にある自国の素晴らしい文化を見つめ直すための、またとない機会を提供する本講座。
第1期は「和文化の巨人たち」をテーマに、人物でめぐる日本の文化講座をご用意しております。


ラインナップは、、千利休、親鸞、近松門左衛門、平清盛、岩崎弥太郎。
芸能、政治、宗教など多様なジャンルより日本文化の礎を築いた人物を取り上げ、
案内人に葛西聖司氏をお招きし、各界最高峰のゲスト講師との対話を中心とした知的興奮あふれるひとときです。


記念すべき第一回は、『世阿弥』


※世阿弥木造 入江美法作 写真:林 義勝 平凡社 別冊太陽『世阿弥』より

室町時代、足利家の庇護のもと、父観阿弥とともに能楽を大成し、晩年数々のすぐれた芸能論を生み出したことで知られています。
観阿弥が創始し、世阿弥がまとめた能楽の流派は、観世流として、世阿弥の死後600年近くたった現在でも、26世宗家の観世清和氏を筆頭に一大勢力として、能楽を支えているのはご存知かと思います。

世阿弥によって集成された能楽のスタイルは、夢幻能といわれ、現在の能楽の底流をなし、
代表的著作である『風姿花伝』は、その圧倒的な人間洞察力と哲学に貫かれるとともに、具体的方法論にまでおとしこまれ、芸能論の傑作と評価されているという、まさに日本芸能史における巨人が世阿弥です。

ゲスト講師は、『イギリスはおいしい』などのベストセラーを生み出し、リンボウ先生との愛称で親しまれている林望先生。毎年様々なジャンルにおいて数多くの著作を執筆され、「イギリス~」シリーズで有名な先生ですが、本業は国文学。日本語の精髄である古典の面白さをいかに伝えていくかを追求し、各種古典文学の紹介を積極的に行っています。近年は、日本文学の最高峰『源氏物語』の謹訳に励み、本講座も執筆の隙を縫ってお越し頂きました。

世阿弥とはどのような人物なのか。何をなし、残したのか。
林先生ならではの『世阿弥』論。
今回は、国文学者の林先生らしく、その著書『風姿花伝』を紐解く事によって、迫りました。

第一回目の構成は、林先生の講演、葛西聖司さんと林先生の対談、ウラク青山にての会食という3段形式です。

講演では、林先生とともに風姿花伝を通して世阿弥という人物に迫ります。
風姿花伝では、年齢に応じたお稽古のつけかた、芸のおしえかたを論じた部分、様々な役の演じ方を論じた部分、考え方や哲学、奥義について論じた部分など各カテゴリーごとにまとめられています。林先生曰く、そのどれからもみられる世阿弥の特徴は、徹底した合理的思考と柔軟性。偏見や思い込みが排除されたその芸能論は、時代や場所を問わず読む人を納得させると言います。それ故に、風姿花伝は芸能論ではなく、芸を論じて人生の万般に及ぶ有益な人生論であると。

実際に風姿花伝を読むとわかるのですが、何歳のときにはこのように教えろ、これはしてはならないといったことがこと細かく書いてあります。しかし、古典芸能にありがちな、みて覚えろ、言われた通りにやれ、ではなく、その全てにしっかりとした理由がつけられており、能について全く知識をもたない素人でもなるほどと思わせるぐらいに説明してあります。さらには、疑問を残したままにならないようにQ&Aまでついているという丁寧ぶり。世阿弥が、このような形で精緻にマニュアル化し理論をまとめていたことが、多くの芸能が廃れていった中、現在でも能楽が残り、演じつづけられている大きな要因であると林先生はおっしゃいます。

教育のマニュアルのみならず、人を感動させるとはどういうことか、演じるとはどういうことか、老人を演じる時、女を演じる時、物狂いを演じる時など、ひとつひとつ実体験をもとに懇切丁寧に説明されています。『秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず』は有名な言葉ですが、さらに「知っている」ということさえもしられてはいけないなど、一歩踏み込んだ世阿弥の理論に触れていきます。

後半は、案内人である葛西聖司さんを交えての対談。
前半にわかりにくかった点の再確認や世阿弥と父観阿弥のお話など、風姿花伝からだけではわかりにくいポイントを広がりをもってお話いただきました。天才であった父観阿弥を観ることによって、自らの理論を形作ったであろう世阿弥。風姿花伝の年来稽古条上では、父の逝去した年齢の50代までしか説明されていません。お手本であった父の逝去した年齢を大きく越えて生きることになった世阿弥は何を考え生きたのでしょうか。足利家の庇護のもと、活動していた世阿弥も、義満、義持の死とともに不遇の時代を迎え、最後は佐渡に流され、創作や執筆をつづけるものの、誰にも知られることなく没しましたが、世阿弥が後世のために心血を注いでまとめた多くの芸能論は、いまだに芸能論の最先端として色あせることなく生き続けています。

最後は、参加者みなさんとのお食事。
世阿弥の「花」をモチーフにしたお食事がご用意されました。

人物を通して日本文化を学ぶ第二回は、
貴族社会の混乱の中、武家という身分から頂点に上り詰め、新しい政治世界を切り引いた「平清盛」のお話です。平家物語などで、悪人として描かれる清盛の虚像と実像。ゲスト講師には、人形作家の辻村寿三郎氏にお越し頂きます。

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