音もせで 思いに燃ゆる蛍こそ 鳴く虫よりも あわれなりけり 紀重之

燕子花が咲き誇る初夏の風物詩といえば、山野を舞うホタルたち。この季節、蛍の催事が各地で催されますが、和塾の場合は他とはちょっと違います。贅沢を究めた特別仕立ての「蛍の宴」。名店のお庭に面したお座敷を借り切り、そのお庭に千匹の蛍を放ちます。夏の夜の蛍の乱舞を完全に独占できる夢幻のひととき。会場は京都の最高峰、10年連続ミシュラン三つ星の「南禅寺畔・瓢亭」。川の流れるその見事なお庭をお客さまのための舞台として独占します。夜のとばりが辺りを包めば、いよいよ『1,000匹のゲンジボタル』 による光の饗宴。灯りを落としたお座敷・縁側から、圧倒的な光の絵巻をご鑑賞いただきました。

瓢亭の創業は400年ほど前、南禅寺総門外松林茶店としてのれんを掲げたのが始まりと伝えられています。その長い歴史の中でも、この蛍の宴は特筆すべき催事でしょう。ご参加のお客さまには、まさに歴史に残る蛍火を存分にお楽しみいただきました。
光の宴をご覧いただいた後は、京料理の粋を心ゆくまで。窓外を飛ぶ蛍の光を愛でながら、国内外の食通を唸らせる美味をご堪能。ご参加のみなさまだけにご用意する特別な特別な光の宴。日本で一番贅沢な蛍のお楽しみでありました。

閑話をひとつ。〜蛍はどうして光るのか?

発光するホタルの成虫は腹部の後方の一定の体節に発光器を持っています。ここがあの美しい光を放つ器官になります。ではその発光器の仕組みはどうなっているのでしょうか。発光器の中には発光を司る三種類の成分が入っています。ルシフェリン・ルシフェラーゼ・ATPの三成分です。
まずひとつめのルシフェリンは発光物質。そのものが光を放つのですが単独では機能しません。ルシフェリンの発光を促すのがルシフェラーゼ。酵素のひとつで触媒作用によってルシフェリンを活性します。最後のひとつはATP。生物の体のなかに広く存在するアデノシン-三リン酸と呼ばれる成分です。この三つが組み合わさることで「ルシフェリンーAMP」という中間体が生成されます。さらにこのルシフェリンーAMPと空気中の酸素が結びつくことで「オキシルシフェリン」という発光物質が生まれるのです。オキシルシフェリンはエネルギーの高い状態にあり安定した状態になるためにエネルギーを光として放出します。その結果ホタルは美しい光を放つというわけです。

ホタルの発光は効率がきわめて高くその変換効率は実に88%に達します。例えば蛍光灯の変換効率はようやく20%ですからホタルの高効率は驚異的です。こうした生物による発光は電気による光源と比較するとこのように効率が非常に高いため熱をほとんど出しません。生物発光が「冷光」と呼ばれるのはそのためなのです。
もっともホタルをはじめとした生物の発光はその仕組みのすべてが解明されているわけではなく今後の研究を待たねばならないことも多いのが事実です。

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