女性美を追求した美人画の大家・喜多川歌麿。
三部作「雪月花」は歌麿の最高傑作と名高い大画面の肉質浮世絵。
長い間行方不明になっていた「深川の雪」。2012年に美術市場に姿を表し、その買付と修復に携わった、岡田美術館館長・小林忠先生によるお話です。

さらには日本橋の古美術商・浦上蒼穹堂より、大英博物館にも出展した貴重な歌麿の作品を拝見させて頂きました。
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日時:2017年9月12日(火) P.M.7:00開塾
場所:ロンドンギャラリー白金
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●喜多川歌麿の「雪月花」とは
「品川の月」
フリーア美術館蔵(アメリカ・ワシントンD.C.)
江戸時代 天明8年(1788)頃
147.0×319.0cm

 

「吉原の花」
ワズワース・アセーニアム美術館蔵(アメリカ・コネチカット州ハートフォード)
江戸時代 寛政3〜4年(1791〜92)頃
186.7×256.9cm

 

「深川の雪」
岡田美術館蔵
江戸時代 享和2〜文化3年(1802〜06)頃
198.8×341.1cm

「雪月花」とは、季節を表す大変便利な言葉で中国などで使われ始めました。
日本でも古来から、詩や絵画などで三部作が作られています。

この三部作がそろって展示された唯一の記録は明治12年11月23日、栃木県定願寺での展観。
その後、三部作は明治期にパリへと渡り、「深川の雪」のみが昭和14年に日本に帰国。その「深川の雪」は昭和27年銀座松坂屋で展示されて以来、長年行方不明だったものが、平成24年に再発見され、岡田美術館の収蔵となったのです。
この時の買い付けに、小林先生も同席されていたそう。
「美術品は躊躇していると他の人に取られてしまうことが多いのですよ。魚釣りと一緒で大きな魚は逃げやすいのです。」
掛けとも言える大きな決断。目利きといえども、大作を買うときは掛けなのですね。。
そして翌日は東京の交通網がマヒするほどの大雪。
深川の雪にちなんだか、忘れられない思い出となったそうです。

ちなみに「品川の月」と「吉原の花」はアメリカへと渡りました。
3部作は国境を越えてな離れ離れに。
しかし、ついに今年138年ぶりに感動の再会を果たしました。

●本年三度の画期的な歌麿展
2017年1月7日~3月27日のワズワース・アセーニアム美術館(米国・コネチカット州)
2017年4月8日~7月9日のフーリア/サッカラーギャラリー(米国・ワシントンDC)
そして
箱根にある岡田美術館では10月29日まで歌麿大作の特別展を開催しています。
岡田美術館 特別展

●再発見された「深川の雪」の考察
小林先生は深川の雪が再発見されて、本格的な画材調査を専門家に依頼されました。その中で、使用されたのは当時長崎に中国から輸入されていた最大の紙「丈二宣」、依頼者は歌磨呂の為に最高級の紙を用意したそうです。
ちなみに二枚継、縦198.8cmのうち(下から135.2cm+63.6cm)で継がれています。

●厳しい時代に作成された三部作
「吉原の花」が描かれたのは寛政3年、この年は贅沢を禁ずる寛政の改革の大変厳しい状況の中で書かれました。この改革は書物や洋学の取り締まりが厳しく行われました。浮世絵もその対象で、版元である蔦谷重三郎が財産を半分没収されたり、風俗を乱すという理由で、遊女の小説出版した人気の山東京伝(さんとうきょうでん)が刑に処せられました。歌麿ももちろん警戒します。そしてしばらく遠い地方の友人宅に身をひそめます。そんな中で、最後に描かれたのが深川の雪。当時の政策に対して挑発的ともいえる絵です。幕府の目を盗み見て必死に書いたことが想像されます。書き上げてまもなく、歌磨呂は亡くなるのでした。

大画面の「雪月花」。是非本物を箱根に見に行きたいと思います。

●江戸の三大遊里
幕府公認の遊郭、「北」の吉原
飯盛(食事の給仕)の名目で半公認されていた、「南」の品川
芸者町の代表格であった「辰巳」(東南)の深川
これらはすべて本当にあった場所です。
吉原は幕府公認だけあって3つの中で一番格が高い。
絵の中に描かれているお膳の中には鯛の尾頭付き(2階座敷)。
一方、「深川の雪」のお膳はカレイ(ヒラメ)の煮付け。少し庶民的です。
こんなところも歌磨呂はしっかり描き分けています。


最後は、浦上様による歌麿の「歌まくら」の解説。
大英博物館にも出展された世界に数冊しかない貴重な版画です。
作品保護の為、マスクをして数名づつ間近で拝見しました。
最近は女性の春画研究者が多いそうです。同姓からみた江戸の女性の分析をもっともっと発表していただきたいですね。




数年前に永青文庫で開催された春画展。初の試みで、いろいろな苦難があったそうです。
春画のイメージを覆す浦上様のお話。こんな裏話が聞けるのも本科お稽古ならではですね。

小林先生、浦上様ありがとうございました。

 

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